職場で悪口を言いふらす行為は名誉毀損になる?企業の対処法
「特定の社員や会社に関する根拠のない悪口が職場内で広まっている」「退職した元従業員がSNSや口コミサイトで事実と異なる書き込みをしている」——こうした状況に頭を悩ませる企業の担当者は少なくありません。
職場での悪口や誹謗中傷は、対象となる個人の精神的苦痛にとどまらず、企業全体のブランドイメージや採用活動・職場環境にも悪影響を与えます。しかし「どこからが名誉毀損になるのか」「企業としてどう対処すればいいのか」がわからず、対応が後手に回ってしまうケースも多くあります。
本記事では職場での悪口が名誉毀損に該当するケース・悪口の種類・企業としての具体的な対処法まで詳しく解説します。
職場で悪口を言いふらす行為は名誉毀損になる?
名誉毀損とは、公然と事実を摘示して他人の名誉を傷つける行為を指し、刑法230条で定められた犯罪です。「公然と」とは不特定多数または多数の人が知りうる状態を意味し、「事実の摘示」とは具体的な事実を示すことを指します。
重要なのは、名誉毀損は「事実であっても成立しうる」という点です。虚偽の情報だけでなく、真実の事実であっても公然と摘示して他人の名誉を傷つければ名誉毀損となる可能性があります。ただし公共の利害に関する事実を公益のために発信した場合など、一定の条件を満たせば違法性が阻却されるケースもあります。
職場という環境においても、複数の同僚に聞こえる状態で特定の人物を傷つける発言をしたり、社内チャットや連絡グループで悪口を流したりする行為は、「公然性」の要件を満たすとして名誉毀損に該当する可能性があります。
また名誉毀損の対象は個人だけでなく、企業(法人)も含まれます。会社に対して事実無根の情報を流したり、誇張した内容を不特定多数に伝えたりする行為は、企業の社会的評価を下げるものとして名誉毀損が成立するケースがあります。特にSNSや口コミサイトへの投稿は「公然性」が高く、悪質なケースでは法的責任を問われる可能性があることを、企業としても正しく把握しておく必要があります。
名誉毀損に該当するかもしれない悪口の種類
職場で起きる悪口や誹謗中傷には複数のパターンがあり、内容や発信方法によって名誉毀損への該当可能性が変わります。以下では代表的な5つの種類を解説します。
- 事実無根の情報を職場内で広める
- 退職後にSNSや口コミサイトに悪評を投稿する
- 誇張や曲解を交えた情報を第三者に伝える
- 業務上知り得た情報を悪用して名誉を傷つける
- 特定の人物・会社に関する根拠のない噂を流す
事実無根の情報を職場内で広める
「あの人は横領をしていた」「上司はパワハラで訴えられたことがある」など、事実と異なる情報を複数の同僚に伝える行為は、名誉毀損に該当する可能性が高い行為のひとつです。発信した情報が虚偽であるほど悪質性が高まり、侮辱罪や偽計業務妨害罪が競合して成立するケースもあります。
対象が個人だけでなく「この会社は違法なことをしている」「経営者が税金を誤魔化している」といった企業に関する虚偽情報を社内外に広める行為も、法人の名誉毀損として扱われることがあります。職場内だからといって発言が法的責任から免れるわけではなく、複数人に聞こえる状態での発言は公然性の要件を満たしうるため注意が必要です。
退職後にSNSや口コミサイトに悪評を投稿する
元従業員が退職後にSNSや転職口コミサイトに会社や特定の人物を中傷する内容を投稿するケースは、名誉毀損として法的対応の対象になりうる行為です。SNSへの投稿は不特定多数の人が閲覧できる状態にあるため「公然性」が高く、書き込んだ内容が事実であっても名誉毀損が成立する可能性があります。
特に「この会社は違法なことをしている」「経営者は従業員を騙していた」のような具体的な事実を摘示する内容は、名誉毀損に加えて業務妨害罪にも該当しうるケースがあります。退職後の口コミ投稿がすべて違法というわけではありませんが、事実の誇張・虚偽の情報・悪意ある表現が含まれる場合は法的対応の対象となりえます。
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誇張や曲解を交えた情報を第三者に伝える
実際には一部の事実であっても、誇張や曲解を加えて「すべてそういう会社だ」「いつもそういう行為をしている」という形で第三者に伝える行為も、名誉毀損の対象となりうる行為です。事実の一部を切り取って悪意ある文脈に置き換えることで、聞いた人に実態以上に悪い印象を与えることが問題とされます。
「一度ミスをしたことがある」という事実を「この人はいつも仕事が杜撰だ」という形に誇張して広めることや、「一時期売上が下がった」という事実を「この会社は経営が傾いている」と曲解して拡散することなどが該当します。情報を正確に伝えない行為は、たとえ元となる事実があっても名誉毀損として問われるリスクがあります。
業務上知り得た情報を悪用して名誉を傷つける
在職中に業務を通じて知り得た内部情報や個人情報を、退職後に暴露したり悪意ある形で第三者に伝えたりする行為は、名誉毀損だけでなく守秘義務違反・不正競争防止法違反なども問われるケースがあります。
「経営会議で聞いた財務情報を暴露する」「人事評価の内容を社外に漏らして特定の社員の評判を傷つける」といった行為が該当します。業務上の機密情報を扱う立場にあった元従業員が、その情報を使って会社や個人を傷つける行為は、複数の法律に違反する可能性が高く、企業として厳正な対応が求められるケースのひとつです。
特定の人物・会社に関する根拠のない噂を職場内外に流す
根拠のない噂話を「聞いた話なのだが」「らしいよ」という形で複数の人に伝える行為も、場合によっては名誉毀損に該当することがあります。伝聞形式であっても、広めた情報が他人の名誉を傷つけ、それが公然と行われた場合は法的責任を問われる可能性があります。
「あの会社はもうすぐ倒産するらしい」「あの上司はハラスメントで訴えられているらしい」といった根拠のない噂が職場内外で広まった場合、その情報を流した人物が名誉毀損や業務妨害の責任を負うケースもあります。「自分が作った情報ではない」「聞いた話を伝えただけ」という言い訳は、法的には通用しないことがほとんどです。
職場での誹謗中傷に対する企業の対処法
職場内での誹謗中傷や社外への悪評拡散に対して、企業は適切に対応する必要があります。放置することは被害の拡大を招くだけでなく、職場環境の悪化や採用・ブランドへの影響にもつながります。以下では企業が取るべき4つの具体的な対処法を解説します。
- 事実関係を調査して証拠を保全する
- 社内での対応と当事者への措置を取る
- 法的対応を検討する
- 外部への情報拡散に対しては正しい情報を発信する
事実関係を調査して証拠を保全する
誹謗中傷の事実を把握したら、まず冷静に事実関係を調査し、証拠を保全することが最初のステップです。どのような内容が・誰によって・どのような手段で・どの範囲に広められたかを確認し、スクリーンショット・証言・記録などの形で証拠を残しておきます。
特にSNSや口コミサイトへの投稿は、削除されると後から確認できなくなるため、発見したらすぐにスクリーンショットで保存することが重要です。社内での悪口の場合も、発言の内容・日時・場所・聞いた人物など、できる限り具体的な情報を記録として残しておくことが、後の対応をスムーズに進めるための基盤となります。
「証拠がなければ対応できない」という状況を避けるためにも、問題を認識した時点でまず証拠保全を優先してください。
社内での対応と行為者への適切な措置を取る
社内の従業員による誹謗中傷の場合、就業規則に基づいた社内調査と当事者への適切な対応が必要です。行為の内容・悪質性・影響の範囲に応じて、口頭注意・書面による警告・懲戒処分などの措置を検討します。
対応の際は、被害を受けた側と行為者双方から事情を聴き、客観的に事実を把握したうえで公平に判断することが重要です。感情的な対応や一方的な判断は、新たなトラブルの火種になりかねません。また対応の過程では、関係者のプライバシーに配慮しながら情報管理を徹底することが求められます。
就業規則に誹謗中傷や情報漏洩に関する規定が整備されていない場合は、この機会に見直すことを検討することをおすすめします。
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法的対応を弁護士とともに検討する
社内対応だけでは解決できない深刻なケースや、退職者や外部の第三者による誹謗中傷の場合は、弁護士を通じた法的対応を検討することが必要です。具体的には名誉毀損・業務妨害などを根拠とした損害賠償請求・発信者情報開示請求・投稿の削除申請・刑事告訴などが選択肢として挙げられます。
法的対応は費用と時間がかかりますが、悪質なケースに対する最も有効な手段であり、同様の行為の再発抑止にも効果があります。また法的措置を取る姿勢を示すことで、継続的な誹謗中傷を抑止できることもあります。
被害が深刻な場合や対応に迷う場合は、早い段階で弁護士に相談することで適切な対応方針が見えてきます。
関連記事:誹謗中傷対策を会社が行う方法!被害を防ぐ手順と相談先
外部への情報拡散には正しい情報の発信で対抗する
誹謗中傷が社外のSNSや口コミサイトに拡散してしまった場合、削除申請や法的対応と並行して、企業側から正しい情報を積極的に発信することが有効な対策となります。採用ページや公式サイトで職場環境・企業理念・実績などを丁寧に伝えることで、誤った情報が求職者や消費者の判断に与える影響を軽減できます。
また弁護士監修のもとで口コミへの反論や公式見解をメディアに掲載するアンバイアスのようなサービスを活用することで、信頼性の高い情報として正しい内容を届けることが可能です。「消す」ことだけに注力するのではなく、「正しく伝える」アプローチを組み合わせることが、企業の評判を守るうえで長期的に効果的な戦略となります。
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まとめ
職場での悪口や誹謗中傷は、内容・発信方法・範囲によっては名誉毀損をはじめとする法的責任の対象となりえます。「職場内での発言だから大丈夫」「聞いた話を伝えただけ」という認識は誤りであり、企業としても従業員としても正しい知識を持って行動することが重要です。
企業側の対処としては、事実関係の調査と証拠保全・社内規定に基づく適切な措置・弁護士を通じた法的対応・正しい情報の積極的な発信という4つのアプローチを状況に応じて組み合わせることが有効です。
なかでも外部への情報拡散に対して正しい情報を届ける手段として、弁護士監修の反論・公式見解を掲載できるアンバイアスは、採用担当者や経営者から注目されているサービスです。誹謗中傷や悪評の拡散にお悩みの方は、ぜひ一度アンバイアスへのお問い合わせを検討してみてください。